コラム「学思堂」

『読むことと聞くこと』

 休日に、ソファーに寝っ転がって中国語の本を辞書なしで一日100頁読めるようになる、というのが昔からの目標かつ理想ですが、これは今に至るも相当ハードルが高いものです。私は、中国の書籍に興味があり、中国に行く度に本や雑誌などを大量に買い込んでしまった結果、家の中はツンドク状態、そして頭の中は煩悩徘徊状態です。しかし、図書購入にかけた元手はしっかり回収しないといけないので、ときどきは読みたい数冊の本を手元に置き、かわるがわる読んで、消化(?)をしています。わからない単語に出会っても、辞書は引かずに飛ばし読みが良い、という話はお聞きになられた方は多いと思います。飛ばし読みは読書の邪道ではないのか、という疑問を何年もかかえつつ、辞書ばかり引いていると、妙に疲れてやる気が失せるのは却ってまずい、と割り切りました。興味のある本なら(歴史関連や現代小説などですが)10頁、20頁と「しがみつく」ことができるようになったのは、ごく最近のこと。わからなくても辞書引かずに先へ進めというのは、確かに当たっているのかも。
 
 ヒアリングをどう伸ばして維持するか。ここ数年、私が続けているやり方は、語学学習用のラジオ兼録音機(中国語で广播录音机/数码播放机)を使って聞き流すというものです。SDカードを機器に差し込めばそのSDカードに録音ができ、再生も簡単です。機器の外部入力端子をパソコンやiPadとコードで接続すればいろいろな中国語のデータが取得できます。たとえばパソコンなら、CCVT官網(中国中央テレビのオフィシャルサイト)のニュースや放映済みのドキュメンタリー番組にアクセスでき、iPadでは阿基米德(アルキメデス)というアプリを経由すれば中国各地のラジオ局ニュースやドラマなどの録音が可能です。この録音機は、携帯も便利なので大変重宝していますが、嵩張るカセットテープで録音し、或いは短波ラジオ(昔BCLブームというのがありました)で中国の放送局の電波を必死に探していたいわばアナログ的学習環境でもがいていた頃と比較すると、技術の進歩に大感激です。このようなサイトや語学アプリなど学習の効率化につながる機器やソフトがどんどん現れているので、うまく使えば、中国語学習意欲を切らさない環境作りを、それぞれが工夫できるのではないでしょうか。
 
 語学学習には時間も費用もかかります。そして時には棚卸も必要です。試験や旅行で、どこまで使えるのか点検します。出来なかったところは、はっきりと自覚し、また継ぎ足して行く、という作業の繰り返しです。いつ果てるともわからないこの修行みたいなことも語学学習のおもしろさですね。

                                             藤野 肇